希望はゼウス

私には3人の甥がいる。
いつまで経っても私の中では、3人とも可愛い幼少期の面影のままだが、実際の長男は小6になった。
その長男の名付け親は、彼の両親である弟と弟の奥さんのアサちゃんだ。
2年後に次男が生まれ、今度は私の両親が名前を付けた。それから3年後に三男が誕生し、今度は私が名前を考えるように頼まれた。

「名前って…。それ責任重大じゃん。アサちゃんが考えれば?」
3人目ともなると命名権など要らないらしく、アサちゃんは大きな溜め息を吐いた。
「もうね、一人目の時に散々考えたから、考えたくないんです。それに、女の子だったらまだしも、また男でしょ。何も思い付かないから、お義兄さん、考えて下さい。決まったらメールをお願いします!」
それで良いのか?と弟にも聞いてみたが、弟も考えることが苦手なようで「何でもいいよ」と付け加えるだけだった。

名前は誰にとっても重要だ。特に子供のうちは、名前が原因でからかわれることもある。
1日中、悩んだ末に私が出した結論は「悠斗」だった。ハムスターを「焼きビーフン」、猫を「ウメ」、インコを「串子」とペットにセンスの欠片も感じられない名前を与えた私にしては、なかなか良い名を導き出したと思う。

それから7年が経過した今になって、アサちゃんから連絡が来た。
「あの、今さらなんですけれど、学校で必要なので、悠斗の名前の由来を教えて下さい」
由来…?そんなものはない。長男も次男も、名前の真ん中に「う」が入るため、それに合わせて五十音順に当てはめていっただけで、なんとなく響きが良かったこととが決め手となった。
「なんとなく…って、そんな理由じゃ学校に提出できません。何でも良いから考えて下さい」

ったく、どこからどこまで人任せな女め。渋々だけど考えた。

<名前の由来>
悠長、悠々など「悠斗」の名前に使われている「悠」には、ゆったりとした落ち着きが感じられ、のびのびと焦らずに、長く幸せな日々を送られるように願いを込めました。また、それに続く「斗」は、水などを救う柄杓(ひしゃく)の絵が文字になった漢字と言われています。悠長に悠々と、ゆったりとした落ち着きを伴いながらも、必要なものを必要としている人に与えることができる存在になって欲しいと願い、「悠斗」と名付ました。悠斗自身、そして悠斗に関わる全ての人が心を通わせ、その想いが長く続くように望んでいます。

我ながら良く書けた。思いもよらぬ後付けの才能にウットリしていると、アサちゃんからメールが届いた。
「あのー、長いんですけど」

て、て、てめえコノヤロー!!
適当に省いていいよ、と伝えると「省くとまとまらない」と、まさかのやり直しを命じられ、目安の文字数を聞いてから、再び考え直して電話を掛けた。
「さすが、お義兄さん!これなら長さもバッチリです。今、悠斗が隣にいるので代わりますね」

私が命名した悠斗も小学1年生になった。
「ねえ~、おんちゃん。なんで悠斗って付けたの?この名前、やだ」
まさかの衝撃的な告白だ。
「なんで?悠斗って良い名前じゃん」
「他の名前が良かったのに…」
「じゃあ、何て言う名前が良かったの?」
「ゼウス」
ゼウス

「ゼウスって…。それじゃあ、おんちゃん名前の由来を説明できないよ」
「でもゼウスが良かった。今からでも変えられる?」
「お母さんに相談してみなさい。真ん中が、う、だからOKになるかもよ」

キウイ

キウイ、サウナ、パウチ、ハウス…なんでも可!

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