弟と詐欺師

電話口で弟は言う。恥ずかしげもなく言う。
「それでさ、俺さ、酔っ払って携帯でエロサイトを見たんだよ。見たことまでは覚えているけれど、有料サイトに登録したつもりなんて、ないんだよ。そしたら、今朝メールが来て、70万円を払えって書いてあるんだけど、やっぱり払わなくちゃダメか?」

聞いていないのではない。考えているわけでもない。ただただ、情けなかった。
血の繋がりのある実の弟、御年35歳。まさか、電話でこんなことを相談してくるとは…。
まさか、には続きがあった。

「本気で言ってるか?それ」
私の問いに弟は答える。
「本気で聞いてる。教えて」
そして、それがワンクリック詐欺と呼ばれる手口であること、メールに書いてある電話番号には何があっても電話を掛けてはいけないことを伝えた。すると、弟は平然と言った。
「えー、俺もう電話しちゃった」

しつこいようだが、御年35歳だ。電話しちゃった♪などと、言われても困る。
「あのさ、ニュースとか見てないの?」
「見てないね」
「ネットは?」
「たまにエロサイトを少々」

知らん。本当に知らん。
すると弟は、キャッチが入ったと言って、電話を切り、それから数分後に再び電話を掛けて来た。

「あのさ、明日までに入金しろって言うんだけど」
「おまえ、掛けただけじゃなくて、律儀に出たの?」
「それでさ、70万円はどう考えても高いと思うから、安くならないか聞いてみたんだよね」
「え?値切ったの?いくらにしたの?」
「7,000円…。やっぱり値切り過ぎかな?」
「70万円を7,000円って図々しくない?100万円の車が1万円になったことある?」

再びキャッチが入ったと言って、電話を切り、それから数分後に電話を掛けて来た弟。しつこいが御年35歳。
「40万でどうだ?って言われたから、4,000円にしてくれってお願いしたら、ダメって言われた」
その辺りからだろうか。
なんだか何の話をしているのか、私も分からなくなってしまい、携帯をスピーカーにして、聞き流していた。
私が理解できない点は、主に2つ。

なぜ、支払う気があるのか?
どうして値切ろうとするのか?

電話を切った後、弟は自ら詐欺師に電話を掛け、何度も値切りの交渉をしたものの、話がまとまることはなく、それでも納得できずに、しつこく何度も電話を掛けては値切ったらしい。
その結果、詐欺師が詐欺師と思えぬ台詞を言った。

「頼むから、もう掛けて来るな」
弟はその言葉に憤っていた。
自分からメールをよこして、電話をしてくれって書いたくせに、もう掛けて来るなとは何事だ、と憤慨していた。
冷めやらぬ様子の弟に、私も言う。

「頼むから、もう掛けて来るな」

ねこお~1

実は他人でありますように!

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