石鹸おばさん

「案外さ、人の話って聞いていないものよね」
母・エミコが不満そうに言う。最も人の話を聞かないエミコが、そんな台詞を言うなんて、お門違いも甚だしい。
しかし、エミコの気持ちも理解できないわけではない。

中途半端に聞かれていて、中途半端に広められた結果、まったく真逆の意味を成してしまった結果がコチラ。
石鹸

「エミちゃん、石鹸が好きだって言っていたよね」
「エミコさん、石鹸を集めているって聞いたもので…」

たしかに、事あるごとに母・エミコは石鹸の話をする。そして、事あるごとに石鹸を戴く。
しかし、母が事あるごとに言っていたのは「石鹸はシャボン玉石鹸に限る!」という話だ。
しゃ
手荒れ・肌荒れ・お天気大荒れ、その全てにシャボン玉石鹸は有効なようで、母は何十年もコイツを愛してやまない。

「で、そういう時どうするの?」
私の問いに母が答えた。
「カードやメッセージが入っていない事を確認して、そのままの包装で友達や知人に誕生日プレゼントとして渡す。キリッ!」
せ・せこくない…《゚Д゚》?
「せこくないだろ。おまえ、ゴミ収集車を見て、せこいって思うか?時代はリサイクルよ」

戴いた石鹸を飲み会で一緒になった女性に、その飲み会で戴いた石鹸は別の飲み会で別の女性に…。
そうやって延々と石鹸を配り続けても、よってたかって続々と石鹸を渡されるため、結局、減ることなく冒頭の写真のようになってしまったらしい。

「気持ちは有難いけれど、何一つこだわらない私が唯一こだわっている物が石鹸なのに、適当に覚えるくらいなら覚えないでもらいたいわ!

石鹸を配った女性から「頂いた石鹸、すごく良い香りでした☆本当に石鹸が好きなんですね」などと律儀に礼まで言われるようで、ますます石鹸おばさんとして噂が広まってしまうことを本気で危惧している。

結局、配りきれなくなった石鹸は「貰える物なら何でも貰う」精神で、立派な財産を築き上げている隣の家の小沢さんへと託された。
「一から話すのも面倒くさいから、特に何も言わずに渡したんだけど、さすが長年、深い付き合いのある小沢さんよねえ~。昨日のお返しに…って、わざわざ持って来てくれたのよ~。本当に嬉しい!」

しゃぼん

エミコは気分を良くしていた。
しかし、私は思う。その石鹸、以前にエミコが渡したものではなかろうか?
「貰える物なら何でも貰う」精神で貰ってみたものの、使わないから返しただけではないだろうか?
真相は、うやむやのままにしておいた方が良さそうだ。

しゃぼん玉
隣人なんてシャボン玉~!

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