朝5時50分の後悔

私の趣味は旅行だ。
海外旅行も国内旅行も好きだ。
しかし、年末年始やGWは旅行代金が跳ね上がり、同じ場所に泊まるのに、倍近くも払わなくてはならないことが許せない。よって、その時期はおとなしく実家へと帰省をすることにしている。ところが、年末年始でも安い航空券を見つけたので、今年の年末年始はタイへ行く。そのため、先々週の3連休を使い、少し早めの帰省をした。

行きは必ず深夜バスを利用する。
我が家は、新幹線の駅から車で30分ほど離れており、さらに新幹線の最寄駅と在来線が連結していないので、在来線を使う場合は、実家からほど遠い駅で新幹線から乗り換えをしなくてはならない。不便極まりないシステムだ。
一方、東京からの深夜バスは、自宅から5分程度の空き地の前に泊まる。どうやら、そこが停留所となっているらしい。

「ただいま」
朝5時50分、早朝に自宅へ到着し、玄関のドアを引く。
玄関に鍵を掛けない風習は、21世紀になっても健在で、東京暮らしに慣れた私には理解しがたい。

当然、誰も起きていないと思っていたが、リビングには3人の甥が起きていた。
「おんちゃん、おはよう。待ってたんだよ!」
この日の帰りを、甥たちは指折り数えて待ってくれていたらしい。
前日の夜、楽しみのあまりに眠れなかった、などど言われると悪い気はしない。
「嬉しいね~。お菓子、食べる?まだ朝ごはん前だけど」

3人は「うん」と頷くと、私が買って来た東京土産の袋を乱雑に開けた。
しかし、その勢いとは裏腹に、一口だけで食べることをやめてしまった。どうやら口に合わなかったようだ。次回からは、ここのお菓子を買わないようにせねば。
「みんなは?まだ寝ているよね?」
私の問いに、小学5年生の長男が答えた。
「おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました」

うそでしょ…。朝5時50分に、このノリ?
「あのさ、おんちゃん、山へ柴刈りって、芝生って山になくない?」
「あのね、芝生の芝じゃなくて、山へ薪にする木を刈りに行くことを、柴刈りって言うんだよ」
「さすが、おんちゃん、昔の人だね」
「そこまで昔じゃねーけどな。で、みんな寝てるよね?」

次に、小学3年生の次男が答えた。
「お父さんとお母さんとおばあちゃんは寝ているけど、おじいちゃんは市場に行った」
そりゃ、朝5時50分。起きているわけもないが、こちらとしては長距離移動で腹が減った。
寝ていただけとは言え、移動はやたらと身体を疲れさせ、腹も減らせる。

「おかえり。遠かっただろ?」
いつもは朝9時頃、一番最後に起きてくる私の母・エミコがリビングの扉を開けた。
「あ、おばあちゃん、今朝は早いね」
3年生の次男が言うと、母は言った。
「たまたま目が覚めちゃったの」

なんだかんだ言っても、母も息子である私の帰りを楽しみにしていたのかもしれない。
「あのさ、腹が減ったんだけど、昨日の夕飯の残りで良いから、何かない?」
エミコは冷蔵庫の中に首を突っ込んでから、私に向かって言った。
「冷蔵庫の中には何もありませんが、スタップ細胞はあります」
小保方
うそでしょ…。朝5時50分に、このノリ?

私は無視を決めた。
「お刺身とかない?」
「お刺身はありませんが、スタップ細胞はあります」
「納豆もない?」
「納豆もありませんが、スタップ細胞はあります」
「スタップ細胞があることは分かりました、冷蔵庫にあるものを教えて下さい」
「夢と希望とマーガリンです」

帰って来なければ良かった…。
心から後悔をした11月22日朝5時50分。

バター

バターは品薄ですからね。

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