父親からのHappy Birthday

先月、私は37歳の誕生日を迎えた。
たとえ何歳になっても、この日を誰かに祝ってもらうことは嬉しいし、覚えてくれているだけでも有難い。

しかし、微妙だ。自分でも忘れかけていた37回目の誕生日を父親からのメールで思い出してしまうとは妙に許せん。しかも、どういうつもりか、そのメールは当日ではなく、前日の朝に届いた。

8月26日 朝10時17分。
「しみったれた」という言葉がピッタリの喫茶店で、いつも注文するモーニングセットのトーストに手を伸ばした矢先、携帯の音が小さく鳴った。画面にはショートメールを受信したとの無機質な通知。どうせauから新料金サービスのお知らせだろう。もしくはauから今月の通信料が7GBを超えそうだと言う忠告。トーストを掴んでいない方の片手で無造作に画面を開く。

送り主は父だ。
明日 元気で 誕生日 迎えてください

何これ…。暗号?
しかも何故、前日に?
しかも何故、今年に限って?

私の記憶が正しければ、今年の春あたり、父はショートメールの使い方を覚えた。
誰が余計なことを教えてしまったのか、遊び道具を得た父は、それを境に何の意図も感じられないショートメールを私に送りつけるようになった。

3月18日 午後12時48分「春 まだです」
5月18日 午後12時13分「孫の運動会 走りました」
6月22日 午後13時22分「近くのサウナに 来ています」
7月21日 午後19時55分「庭で花火 高くあがれ」

どうしろと?
これを送りつけられて、何て返信しろと?

3月18日 午後12時52分「それだけでは意味が伝わりません」
父からの返信 「あ そうですか」
5月18日 午後12時16分「ゆっくり休んで下さい」
父からの返信ナシ
6月22日 午後14時11分「それが何か?」
父からの返信 「何でもありません」
7月21日 午後19時57分「火の元には気をつけて」
父からの返信ナシ
8月26日 午前10時21分「わざわざありがとう」
父からの返信 「なんですか?」

なんですか?って何だよ!!!!!
ちょっかい出して来たのはテメエの方だろ!!

面と向かって「誕生日おめでとう」「ありがとう」と言い合うよりも、格段に照れくさく、心地悪ささえ感じてしまう父からのバースデーメール。たぶん、ショートメールを送るという行為そのものに楽しさを見出しているだけで、そこには何の意図も、さらには私が強烈に感じた照れくささもないのだろう。
何とも表現できない、こそばゆい感覚に包まれているのは、離れた場所に一人で暮らす息子だけなのかもしれない。

それでも、この短い一言は、何の節目も迎えないまま37年目を迎えようとしている私に、感謝の気持ちを芽生えさせた。
父への感謝。母への感謝。家族への感謝。自分の人生への感謝。会社への感謝。
帰省しても甥たちが私に付きっきりのため、あまり会話を交わすことのない父への気持ちも湧いて来た。
何一つ孝行しないまま36年間を過ごしてしまって、ごめんなさい。
そして、遠く離れた場所で好き勝手に生きながら大人になってしまった息子の誕生日を覚えていてくれて、ありがとう。

8月27日 誕生日当日の朝。
母からの電話が鳴る。
母親にも、ありがとうをきちんと伝えたい。

「もしもし」
「もしもし、起きてた?アンタさ、約束してた伊勢丹限定のお菓子、送ってくれた?まだ届かないんだけど」
「あ、忘れてた!ごめん。今日、買って送るよ」
「もう!何やってんのよ。今日じゃ遅いのよ。お父さんのお客さんの谷重さん、アンタも知ってるでしょ」
「うん」
「そこの息子さん、今日が誕生日なのよ。東京でしか買えないお菓子を持って行くって言っちゃったじゃないの」
「今日送れば明日には届くから、そんなに怒らないでよ。でも誕生日一緒なんだ」
「誰と?」
「………」
「そういえば昨日、お父さんが谷重さんの息子さんに送ろうと思って間違ってアンタにメール送ったみたい」
「………。え?間違って?」
「うん、間違った~!ま、いっか!って言ってたけど」
「………」
「じゃ大至急、お菓子送ってね。切るわよ」

お父さま、お母さま、私は東京で逞しく生きてまいります。
37年も経てば忘れますよね…。
あなたたちの息子は、2014年8月27日、37歳になりました。

ケーキ

しみったれた人生に Congratulation!

【追伸】嬉しいことに会社の方々から誕生日プレゼントを頂きました。本来なら写真を掲載して紹介したいところですが、わいせつ行為に当たりそうなので割愛します。けがらわしい会社だわっ♥

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