鬱陶しい二択の女

前略、お父様、お母様
よく知らない女ですが、ボコボコにしても良いですか?  草々
そんな経験をした。

私は2年に1度、必ず引っ越しをする。賃貸マンションである以上、契約更新をする気などなく、おかげサマで引っ越し貧乏に陥っており、生活は苦しい。それでも私は必ず引っ越しをする。飽きるという理由もあるが、せっかく短いような長いような人生の一部分を東京で送るのなら、いろいろな場所に住んでみたい。

しかし、引っ越し自体は面倒なので好きではなく、さらに新しい病院、クリーニング屋、喫茶店など色々と探さなくてはならないこともまた大変だ。その一つに美容院も入るだろう。
スーパーやコンビニは存在さえしてくれたらそれで良く、こだわりはない。ところが、病院(特に歯科)は医師や治療方法との相性もあるし、クリーニング屋は価格に大きな開きがある。喫煙者なので喫茶店はタバコが吸える場所が良く、さらに非喫煙者が少ない店がいい。美容院も、技術や価格、人柄に天地ほどの差があり、充てたパーマがサザエさんになってからでは手遅れだ。

月曜に、引っ越し先の東新宿付近で見つけた美容院で、カラーリングをしてきた。
オシャレな言い回しをしたものの、和訳をすると白髪染め。ここ数年、サイド部分に白髪が目立っている。36歳にもなれば、ある程度の白髪は諦めるべきかもしれないが、白髪は色素が入っていない分、黒い髪より軽くてハネる。サッカーで言うところのフォワードみたいなもんで、前へ前へと出たがるから厄介だ。

担当になったのは、鬱陶しいほど喋る女。
しかも話し方や話す内容が独特で、心の狭い私の「生理的に苦手な部類」に入る。
髪を染めながら女が尋ねる。

「ご両親は早いうちから白髪が生えていましたか?」
誰も原因究明なんて頼んでいないのに、いきなり親の話?
「すでに他界しました」
ピンピンしているアイツらが聞いたら、本気で怒るだろう。
「なんか、私の後輩に熊本の子がいて、あれ?長崎だったかな?あ、やっぱり熊本だ。お城の近くって言ってたし。あれ、長崎にもお城ってありましたっけ?」
ちっ、バカな女め。長崎は日本屈指の城下町だろ。城だらけだっつーの。
「あ、やっぱり熊本だ。あれ?長崎?峰竜太の出身地って言ってたんですけど」
それ長野だからブス!!
長野の国道を走っていて、下条村のあたりになると、ようこそ峰竜太のふるさとへっていう看板があって、道の駅では峰竜太のオリジナルグッズまで買えるんだってばブス!!
ちなみに峰竜太は長野でも、竜雷太は大阪府箕面市の人だから、ごっちゃにすんなよ。

「その熊本?あれ、長崎?その子のお父さんだったかな?お母さんだったかな?どっちだったかな?お父さんって言っていたような…あ、お母さんだ。母の日に白髪染めが出来るシャンプーを送ったって言ってたから。その、お母さんが白髪がすごく多くて、だから彼女も25?あれ、26?あ、25だ。25歳なんですけど、白髪がめっちゃ多いんですよ~」

鬱陶しい二択が満載・満載・野村萬斎!
「長野出身の25歳の後輩は母親の遺伝で白髪が多いんですよ」
3秒で終わる話じゃねーかよ。
もっとも、その話いらなくね?後輩のこととか知らねーし。

返事もせずに雑誌に目を落とす私はクールな野村萬斎気取り。
びっくりね。今どきの男性ファッション誌ってメンズエステの広告が多いんだね。
メンズエステエースみたいな人気サイトもあるし、オスも美しさを意識する時代なんだね。そうですよね、IKKO先輩。

IKKO3

無視さえ貫けば会話も止めるだろう…と思ったものの、この女、めげない、めげない、めげちゃダメ!!
どんだけぇ~~~~!!!!!!!
IKKO2

「私の前の職場で、あ、前の前の職場だったかな?あ、違う。前の前の前の職場で、幼稚園児なのに髪の一部分だけが白髪の子がいて、あ~違います、すいません!やっぱり前の前の職場です。吉祥寺だったから。吉祥寺って言ってもJRの吉祥寺駅じゃなくて、京王線の吉祥寺公園の方なんですけど、あ~でも、JRの吉祥寺駅からも歩けるんですけど」

雑誌を閉じて軽く反撃。
「前の職場にも、前の前の職場にも、前の前の前の職場にも行かないから、その話は話さなくていい!」
女は少し驚いたような表情をしたけれど、察しの良いタイプではないらしい。
「…何か、あったんですか?吉祥寺に。あ、吉祥寺公園に。苦い思い出があるとか」

その問いかけには無視。
「時間がないので、急いで下さい」
ちょっと怒った口調でそう言うと、女はキッパリとした口調で私に謝った。
「すいません。染まるのにお時間がかかりますから、早くは出来ないんですよ」

そういうことじゃねーよ、アチキの言いたいことは。
さっさと塗って失せやがれってことを言いたいのダス。
作戦を変更。
「雑誌を読んでいるので静かにしてください」
「あ、何か面白そうな記事、見つかりました?」

うざい、うざい、うざい!!何だ、この女。
「見つかったら教えるから、それまで一切、話しかけないで下さい。分かった?」
店員は「はい」と大きく返事をした後に、わざとらしく、口に手を当てて、首を縦に振った。
声を出すな、とは言ってねえーよ!! いちいち目障りだな。

ようやく黙って、塗り終わったかと思ったら、右手の人差し指を立て、その横に左手の親指と人差し指でゼロを作り、鏡に映る私に向かって微笑んだ。
「10分待ってろって事だよね。逆に映るから01分に思えるけど」
私が嫌味の一つを加えて言うと、「はい。あれ~?間違えちゃった」と大きく笑った後に、わざとらしく、口に手を当てて、首を縦に振った。
クソっ!なんだろ、この敗北感。うっかり油断をしたら惚れちまいそうなブスだぜ☆

そして帰り際。
「次は来月ですかね?再来月でも大丈夫かもしれませんね。でもやっぱり来月の方が生え際が目立ちませんよね?」
「これからお買い物ですか?帰られるんですか?」
「ランチは済ませました?今からですか?」
「お帰りは右ですか?左ですか?」

……………il||li _| ̄|○ il||l
美容院チョイス、痛恨のミス。
失敗

前略、お父様、お母様

よく知らない女ですが、ボコボコにしても良いですか?  草々

鬱陶しい二択の女” へのコメントが 2 点あります

    • 通りすがりのメガネさま

      コメントを頂きありがとうございます。
      本当に奇跡のブス野郎(女)でした。でも、美容師だけあってオシャレで、
      きっと何度か通うと、ときめいちゃうパターンだと思います(笑)
      その際は、またご報告します❤

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